高齢者のむし歯放置が死亡リスクを高める――歯の健康は命の問題だった
「むし歯くらいで命に関わるはずがない」
そう思っている人は、決して少なくありません。
しかし近年、高齢者がむし歯や歯のトラブルを放置することで、死亡リスクが大きく高まるという衝撃的な研究結果が報告されました。
むし歯を放置すると死亡リスクが約1.7倍に
大阪公立大学と大阪大学の研究チームは、大阪府内に住む約19万人の高齢者を対象に、歯の状態と死亡リスクの関係を大規模に分析しました。
その結果、次のことが明らかになりました。
- 健康な歯と治療済みの歯の合計本数が少ない人ほど、死亡リスクが高い
- むし歯などのある歯を治療せずに放置している高齢者は、死亡リスクが約1.7倍に上昇
つまり、「歯を失っている」「むし歯をそのままにしている」状態は、単なる口の問題ではなく、全身の健康や寿命に直結しているということです。
なぜ歯の放置が命に関わるのか?

最大のリスクは「誤嚥性肺炎」
専門家が特に警鐘を鳴らしているのが、誤嚥性肺炎です。
むし歯や歯周病があると、
- 口の中に細菌が増える
- 噛む力や飲み込む力が低下する
その結果、食べ物や唾液、細菌が誤って気管に入り、肺に感染を起こします。
誤嚥性肺炎は高齢者の死亡原因として非常に多く、
日本では肺炎が死因の上位に入る理由の一つとなっています。
噛めないことが全身を弱らせる
歯の本数が減ると、食事にも大きな影響が出ます。
- 硬いものを避ける
- 炭水化物や柔らかい食品に偏る
- タンパク質やビタミンが不足する
こうした食生活は、
- 筋力低下(サルコペニア)
- 免疫力の低下
- フレイル(虚弱)
を引き起こし、転倒や寝たきり、感染症リスクを高めます。
「痛くないから大丈夫」は危険なサイン
高齢者のむし歯は、痛みを感じにくいケースも少なくありません。
- 神経が弱っている
- 慢性的な炎症で感覚が鈍っている
このため、痛みが出たときにはすでに重症化していることもあります。
「痛くない=問題ない」ではなく、
「治療していない歯があること自体がリスク」なのです。
専門家が勧める高齢期の歯の守り方
1.定期的な歯科受診を習慣に
症状がなくても、半年〜1年に1回の歯科チェックが理想です。
- むし歯の早期発見
- 入れ歯や被せ物の調整
- 口腔内の細菌管理
これだけで、誤嚥性肺炎のリスクは大きく下げられます。
2.治療済みの歯を「使える状態」で保つ
歯の本数だけでなく、「きちんと噛めるか」が重要です。
- 合わない入れ歯を放置しない
- 被せ物が取れたままにしない
噛める歯を維持することが、食事・体力・免疫力を守ります。
3.口腔ケアは命を守るケア
歯磨きや口腔ケアは、見た目や口臭対策だけではありません。
- 細菌数の減少
- 誤嚥性肺炎の予防
- 全身の炎症リスク低下
口のケア=全身の健康管理という意識が大切です。
まとめ:歯の健康は「生きる力」を支えている

今回の研究は、
「歯の治療を後回しにすることが、命に関わるリスクになる」
という事実を、明確なデータで示しました。
高齢期こそ、
- むし歯を放置しない
- 噛める歯を守る
- 口の中を清潔に保つ
これらが、健康寿命を延ばす最も身近で確実な方法です。
歯は、食べるためだけでなく、
生きるために必要な臓器なのです。
